2015年06月30日

放射線室の旋風H

胸部エックス線写真について、楽しく学ぼう(連載シリーズ)


9.肩甲骨

「腕で撮影台を抱えるようにしてください。」あるいは「手を腰に当て、肘を前に突き出します。」

これは、胸部撮影における最も特徴的な動作だと思います。一体全体、何をさせたいのでしょうね。すごく難しい格好です。そして、技師の立場でいうと、すごく説明し辛く、なかなか理解してもらえない体位です。


もし腕を動かさずに「気を付け」の姿勢で撮影したとすると、肺に逆三角形の形の肩甲骨が完全に重なって写ってしまいます。ということは、そこは他の部分の肺に比べ、見辛くなってしまいます。(肩甲骨のある位置は分かりますよね?)もし肩甲骨が腕時計のように簡単に外すことが出来るのなら良いのですが、そうもいきません。

ではどうするのか。それは肩甲骨を動かすのです。体の横側、つまり肺と重ならない場所へ移動させます。

しかし普段の日常動作で意識的に肩甲骨を動かすことなんてないですよね。いきなり「肩甲骨を横へ動かしてください」と言われても、困ってしまいます。そこである動作をしてもらうことで、間接的に肩甲骨を動かしてもらっています。それが「腕で撮影台を抱えるようにしてください」であり、「手を腰に当て、肘を前に突き出します」なのです。


例えば左手で右の肩甲骨を触りながら、右手で台を抱えるように前方に挙げてください。肩甲骨が移動したことが確認できますよね。しかしこれが、ただ軽く挙げただけでは、肩甲骨はほとんど動きません。今度は肩を前方にグっと突き出しつつ、手のひらを内側からグっとひねった状態で腕を前方に挙げてみましょう。あきらかに肩甲骨が外側へ移動したことが確認できたと思います。

これは「腕で台を抱えるようにしてください」の例ですが、個人的には「手を腰に当て、肘を前に突き出します」の方法で体位を決めています。

他の例として、「気を付け」の状態で腕全体を思い切り内側へネジって回転させても同じです。肩甲骨が外側へ移動します。


この一連の「肩甲骨を移動させる」動作ですが、台をチョイト抱えるような感じ・軽く肘を前にヒョイと突き出すだけでは完全に肺から外れてくれません。大げさかもしれませんが気合を入れて肩をググッと前に突き出し、手のひらを内側にググッとひねる!あるいは肘を前にググッと突き出す!これくらいしないと完全に移動してくれません。技師からの指示で肘をグッと押されて、その姿勢を保つように言われたけど、辛いし面倒くさいから力を抜いちゃえ、なんて思っていたら、良い写真ができません。他の誰でもないご自分の写真です。せっかくお金を出してまで撮影をしているのですから、良い写真、引いては良い診断のために是非とも御協力ください。(続く)


肩甲骨C.jpg  肩甲骨D.jpg

拍手する
posted by 福岡聖恵病院 at 14:04 | めぐみだより

2015年06月29日

授業風景

デイケア聖恵でも活動の一環として、「めぐみの学舎」をおこなっています。ご利用者様の意欲の向上を目的として、スタッフが毎回試行錯誤しながら、授業内容を考えております。その授業風景をご紹介しましょう。

今回は、「音楽」を題材にスタッフが頑張りました。内容は、九州の歌を県ごとに取り上げました。特に博多どんたく囃子の歌では、しゃもじを使って拍子をとりながら、皆さんと盛り上がりました。(にわかせんぺいのお面もかぶって、いい雰囲気です。)拍子を取るのは、ご利用者様の方がずーっとお上手で、スタッフも感心しきりです。

また、この日、参加されていなかった方たちの為に、再度企画したいと思っています。本当に楽しい時間でした。


DC聖恵B.JPG  DC聖恵@.JPG


DC聖恵A.JPG  DC聖恵C.JPG

拍手する
posted by 福岡聖恵病院 at 16:41 | めぐみだより

2015年06月26日

”認知症”といっても・・・B

その後も古賀さん(仮名)は、サポートグループを訪れては、介護仲間の他のご家族の方々と励まし合いながら、介護にまつわる心境を語って下さいました。ある時は、「六歳の時から朝晩、継母に料理をさせられた御蔭で、今、家内のために毎日三食を作ることができます。継母には、本当に感謝しています。」とにっこりして言われ、またある時は、「家内には安月給で苦労をかけたのに、その給料の中で何十年も家計をやり繰りしてくれて、感謝しています。今は家内に恩返しをさせて頂いています。」と生き仏のようなお顔で語られました。「銃撃で死ぬはずだった身が、こんな年まで生きて・・・家内が死んでその葬儀を済ませたら、仲間たちの元へ逝きたい。」と常々話されていましたが、それは叶わず、奥様に先立って寿命を全うされました。現実は、台所に長時間立つのもお辛かったようですが、最期までご本人曰く「命懸けで介護」を続けられた姿には、感服するばかりでした。サポートグループの他の参加者の中には、「自分も、もうちょっと夫に優しくしようと思いました。」という方も。私も古賀さんの爪の垢を煎じて飲みつつ、今日も認知症の医療(と家族孝行?)にいそしみたいと思います。


介護E.jpg   介護C.jpg

拍手する
posted by 福岡聖恵病院 at 09:45 | めぐみだより

2015年06月25日

”認知症”といっても・・・A

 さて、患者さんが多彩なら、そのご家族もまた多彩です。陸軍に従事していた時分、空からの銃撃で周りの仲間がバタバタと死んでいく中、自分だけが生き延びたという古賀さん(仮名・八十代男性)。(今でこそ「死」というものから遠ざかっていますが、戦争を知る世代にとって、このようなエピソードや経歴は珍しくないのでしょうね。)認知症患者さんのご家族ならどなたでも参加して頂けるサポートグループを院内で毎週開催し、精神保健福祉士や臨床心理士がその世話役をしていますが、古賀さんもこのサポートグループに頻繁に参加して下さっていました。

 その古賀さんに、長年、仲睦まじく夫婦二人暮らしをしていた奥様から、突然「変な男が家にいる」、「悪い男がさらいに来た」と言われ、殴られるという事件が起こりました。追い出されて家に帰れなくなった古賀さんは、すっかり困惑され、息子さんとともに相談に来院されました。奥様は、レビー小体型認知症と診断され、BPSDも激しく、緊急入院されることとなりました。それから数か月が経ち、薬物療法が奏功して奥様の症状が落ち着いてこられた頃、古賀さんは独り暮らしが寂しくなったこともあってか、奥様を家に連れて帰りたいとの一心で、心配する周囲の反対を押し切り、退院を断行されました。ご高齢の古賀さん一人での自宅介護は、大変な苦労を伴うものだったろうと推察しますが、当院の重度認知症患者デイケアと訪問看護、ショートステイを併用して利用して頂くことで、その希望を叶えられました。(続く)


認知症A.jpg  介護A.jpg

拍手する
posted by 福岡聖恵病院 at 08:56 | めぐみだより

2015年06月24日

”認知症”といっても・・・@

 老年内科と老年精神科の両方を標榜する当院は、重度の内科的合併症を伴うケースも含め、認知症疾患を専門の一つとしています。

“認知症”という枠組みで纏めてしまえばそれまでなのですが、一口に認知症の患者さんといっても、当然のことながら実に多彩な方々がいらっしゃるものです。私がこれまでお話を聞かせて頂いた、珍しい経歴の持ち主には、上海で海軍のタイピストをしておられた方や、特攻隊の飛行教官をしておられた方、シベリアに五年間抑留されていた方などがいらっしゃいました。必ずしもじっくりと語って頂けるとは限りませんが、個々人の人生を紐解いて頂くことができれば、多種多様な物語に満ち満ちていることだろうと思います。


 長年、幼児教育に携わってこられた新宮さん(仮名)は、短期記憶という点では、一分間に何度も同じことを尋ねたり話したりされるなど、認知症の症状が顕著ですが、ある時、ふと愚痴をもらしがてら私が子育ての悩みについて質問してみますと、人が変わったようにズバリ、見事なアドバイスを返して下さり、こちらが驚いた次第です。昔取った杵柄というのでしょうか、幼児教育に対する洞察の深さは、発症前と変わることなく、全く色褪せていないのです。ご年輩の方々は、どのような智慧が眠っているかしれない、宝庫なのかもしれません。そのような心持ちで見つめていると、いつもの認知症の病棟やデイケアが、まるで違った風景のように浮かび上がってくるものです。(続く)


カウンセリング@.jpg   認知症B.jpg

拍手する
posted by 福岡聖恵病院 at 11:16 | めぐみだより