胸のエックス線写真について、楽しく学ぼう(連載シリーズ)
12.立つ、座る、寝る
(立った状態での撮影)
普段、胸部エックス線の撮影は、立ってする事が多いですが、立って撮影することで次のような利点があります。 もし肺から空気が漏れた場合、空気は軽いので肺の上に集まります。お腹のどこかから空気が漏れた場合は、お腹の上の方(肺の真下)に集まります。これは確認しやすいです。また、肺に水が溜まった場合、水は重いので肺の下に溜まります。これも確認しやすいです。
(座った状態での撮影)
今までは立った状態での撮影を考えてきましたが、座った状態で撮影すると何が違ってくるのか見ていきましょう。実際に立つことが難しい患者様には、車椅子に座った状態で撮影させてもらっています。その場合と比較してみますね。
初めにどういう感じで撮影しているのかというと、患者様に車椅子に座ってもらい、椅子の背もたれと背中の間にフィルムを入れます。そして患者様の前方からエックス線を入射しています。 この方法だと、まずアゴを乗せるものがないので、アゴが肺と重なって写る可能性が出てきます。次に立ったときのように台を抱えたり手を腰に当てるようにした体勢が難しく(出来たとしても腕や手が肺に重なって写ってしまう可能性が出てきます)、腕は下げた状態で撮影しており、肩甲骨がまともに肺と重なって写ってしまいます。そして、エックス線を体の前から受けるので、心臓が大きく写ってしまい、その分、肺の面積が小さくなって写ります。
(寝た状態での撮影)
まず寝た状態での撮影を説明しますと、患者様がベッドの上に寝ている状態のときに、背中の下にフィルムを敷きます。そして患者様の上から体の前面に向けてエックス線を入射するという形になります。
この方法ではアゴは写りにくいでしょうが、肩甲骨が写り、心臓が大きく写ることは座った状態と変わりません。しかし、今回は立った状態や座った状態と違い、上半身が横になっていますので、漏れた空気や溜まった水の存在が比較的分かりづらくなります。
このような理由で、寝たきりの方は寝た状態での撮影で仕方ないのですが、座れるならば座ったほうが、さらに立てるのであれば立ったほうが、より良い撮影となるのです。立って撮影する訳が分かって頂けましたか?

posted by 福岡聖恵病院 at 12:08
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めぐみだより